ゴーストガン(Ghost gun)とは、銃社会アメリカで使われている言葉です。
日本語に直訳すると幽霊銃。
日本でも、先日参院選の応援演説中に安倍晋三元首相が銃撃された事件で注目されています。
この記事では、最近話題になっているゴーストガンについてまとめております。
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Contents
ゴーストガンとはデータに登録されていない銃のこと?
アメリカは銃社会ですが、誰もが自由に銃を持てるわけではありません。
1993年にはブレイディ拳銃管理法が制定、1994年に施行されました。
銃を購入する際には5日間の保留期間を設け、この期間に購入希望者の身元調査を行うことを銃販売店に義務付けるという内容です。
銃を購入する際の保留期間については既に25の州で設けられていましたが、この規制法により、規定がない州で銃を購入するという抜け道をふさぎました。
銃犯罪歴がある人や精神病疾患者、軍を不名誉除隊した人間、麻薬中毒者、未成年などへの銃の販売は禁止されました。
さらに州によっては州法で独自に規制が設けられており、コロラド州やワシントン州などはライセンス制が取り入れられています。
銃販売店から購入する場合、銃器は全て購入者と紐づけて登録され、銃本体にはシリアル番号が刻印されます。
仮に銃を使用した犯罪が起きた場合、登録データを基に捜査が行われるため、早期の犯人逮捕につながります。
ですがこういった表向きの情報とは別に、データの登録がされていない銃が世の中には出回っているのが現状、これがいわゆるゴーストガン(幽霊銃)と呼ばれるものになります。
ゴーストガンは追跡が事実上できないってホント?
市場の銃は基本的に、メーカーが工場で製造・組み立てた後、完成品がユーザーの手元に届きます。
シリアル番号は工場から出荷される時点で既に記録されているので、購入者との紐づけに漏れがないものとされていました。
ところが、ゴーストガンというのは個人でパーツや組み立てキットを手に入れて自分で完成させるものです。
アメリカでは完成度が80%を下回る銃は法的には銃器とはみなされません。
そのため、例えばあちこちのネットショップから送付先や決済方法を別々にして部品をバラバラに購入し、家で組み立てれば、本来購入時に実施されるはずの身元調査や購入者とシリアル番号の紐づけ登録をすることなく銃が手に入ってしまうのです。
もちろん銃にはシリアル番号も刻印されていないため、実在するというデータがどこにも存在しない銃(=ゴーストガン)が出来上がります。
こうなってしまうと、犯罪が起こった際に登録データを基に捜査をしても、追跡は難しくなりますね。
つまり、未成年や正規ルートで購入出来ない人も購入が可能となってしまうのです。
こういった銃は犯罪に使われることも多く、アメリカで問題になっています。
実際、カリフォルニア州で押収された銃の30%にシリアル番号がついていなかったというデータもあります。
日本でも、エアガンを違法改造した人が逮捕されるニュースがたまに報道されていますよね。
以前話題になった3Dプリンターを使った3Dプリント銃も、ゴーストガンといわれます。
動画にあるような本格的な銃もゴーストガンとして作れてしまいます。
現状の法律だとレシーバーと呼ばれる部分だけがシリアルナンバーを義務化していて、他のパーツにはシリアルナンバーは必要ないとのこと。
なのでそのレシーバーだけを3Dプリンターで作って 、他のパーツを通販などで買えば合法的に小銃やライフルが作れてしまうということのようです。
恐ろしやです。
アメリカでゴーストガンが増えた理由は?
アメリカでは、ここ数年でゴーストガンの摘発が増えていて、押収された数は、コロナ禍でも増加しているそうです。
ロックダウンによって外部との接触が減ったこともあり、家でDYI的な感覚で組み立てる人が増えたことが要因の1つとみられます。
コロナ禍で増えたアジア人ヘイトの暴漢から身を守るために、これまで銃を手にしたことがなかったアジア系の人たちも銃を手にしています。また、万が一の護身用にとネットショップで購入したキットを組み立てて持ち歩いているという方もいるようです。
組み立てキットを購入すれば、30分もかからずに組み立てることが出来るそうなので、銃を手にすることのハードルが低くなっているのかもしれません。
アメリカ加州では、2020年の1年間だけで813丁のゴーストガンが押収されています。
サンフランシスコにおいても2016年が6丁だった押収件数が2019年には77丁、2020年は164丁、2021年は前半だけで115丁となっており、爆発的に増えている印象です。
ほかの地域でも、警官や学生、市民がゴーストガンで死傷する事件が増加しています。
安倍元首相の暗殺に使われたのはゴーストガン?
先日のショッキングな事件、安倍晋三元首相が選挙応援演説中に後ろから撃たれ亡くなった時に使われたのはゴーストガンなのでしょうか?
ゴーストガンの定義自体がはっきりと決められているわけではないので、お手製の銃という意味ではゴーストガンと言っていいと思います。
アメリカでもキットとして売られていたり、3Dプリンターで自分で作ったもの以外の手製のものもゴーストガンと呼ばれているので、広い意味でゴーストガンということになるかと思います。
銃の火薬が発火して筒を通して飛び出していく仕組み自体はシンプルなものなので、作り方によっては誰でもできてしまうという怖い部分もあります。
今回捕まった山上徹也容疑者もネットの動画で観て自分で作ったと供述しているので、今後模倣犯が出てこないか、そちらが心配になります。
Go fuck yourselves @UPS pic.twitter.com/IFPcEubwPU
— GhostGuns.com (@GhostGcom) July 2, 2022
お手製となるといろんなタイプのゴーストガンがあるようです。
鉄製のパイプがあればどんな形でも作れてしまうのではないでしょうか。
3Dプリントとかゴーストガンとかですらない、パイプとか使ったDIY銃に見えるな。 pic.twitter.com/QCGojKLLLW
— Dr. RawheaD (@RawheaD) July 8, 2022
手製の銃についてはDIY銃という呼び方をして分けている人もいるようです。
ハンドメイド銃という人もいるかもしれません。
3Dプリンターやキットで売られているものをゴーストガンと呼ぶ場合が多いのかもしれません。
アメリカでは普通の子供たちがゴーストガンを持っていると言われていますから、それらは自作ではなく通販で買ったキットなどがほとんどなのでしょう。
ゴーストガンへの対策はとられている?
アメリカでは、バイデン政権が2022年4月に、身元確認しないで購入できる自分で組み立てるタイプのゴーストガンを取り締まる新しい規制を発表しています。
ホワイトハウスの発表によれば、今後は組み立て式のキットも銃器に指定され、販売者は製品にシリアル番号を記載することや販売する際に履歴チェックを行うこと、販売記録を保存することが求められるそうです。
バイデン大統領は、ホワイトハウスの演説で「この規制で命を救い、犯罪を減らすことができる」と強調しています。
Everytown for Safetyによれば、オンライン銃器販売業者80のうちの60%以上が過去5年以内にゴーストガンキットの販売を開始していたそうです。
ただキットの方を規制しても自分でプリントアウトして作ってしまうものはどうやっても規制できないと思います。
ハンドメイド銃、DIY銃についてもどうにも取り締まる方法がないのが現状ではないでしょうか。
ネットでいろんな情報が簡単に手に入ってしまう弊害ということでしょうか。
火薬の方をどうやって取り締まっていくのかも含め、対策を練ってほしいと願います。